それから約二年の月日が流れた。
千秋さんが自分のことを話してくれる日はなかった。
「美少年、そろそろ受験か?」
「うん。寮生活にしようと思って」
千秋さんとの関係が変わらなかったように、母親との関係もまた、変わらなかった。
学校では、告白されない日のほうが少ないというほど、女子に告白され続けた。
もちろん、断った。
愛情を知らない俺が、恋愛なんて出来るわけない。
そして俺は、高校進学とともに家を出ることを決めた。
千秋さんと別れるのは寂しいけど、これ以上、あの家にいたくなかった。
「そっか……寂しくなるな」
「そうだね。でも、それまでは毎日でも来るから」
どれだけ偽りの笑顔が上手くなっても、千秋さんには一度たりとも見せたことがなかった。
いつも、心の底から笑顔でいられたから。
「あー……ごめん、美少年。明日からここに来られないや」
俺の笑顔とは裏腹に、千秋さんは寂しそうな顔をした。
きっと、俺の顔からは一瞬で笑顔が消えただろう。



