「まあ……」
千秋さんの顔を見たくなくて、横に寝返りした。
拗ねてると、子供みたいだと言われるかもしれないな。
「そんな君に、年上としてアドバイスしよう。とりあえず、偽りの笑顔を作りな。みんな、アンタの笑った顔に騙されるよ」
「そんな簡単なことでいいのか?」
俺に出来るかどうかは別として、手段としてはかなり簡単だった。
俺はつい、顔を上げてしまった。
「おうよ。仏頂面よりも笑顔。人によく思われるようなキャラを演じな。アンタの本性はあたしが知ってるし、いつでもここにいるから。ストレス溜まったら、話に来なよ」
「本当に、いつでも来ていい?」
「用がなかったら、絶対にいるよ。美少年の話なら、なんでも聞く」
このときばかりは、千秋さんが本当の母親だったらと思った。
その日は他愛のない会話をひたすら続けた。
お互いに眠くなれば、帰宅。
初めて会ったころは、中学生だから早く帰れとか言われてたけど、最近はない。
そして、家のドアの前まで来て、ドアノブに手が伸びなかった。



