そのまま、マンションに入っていった。
もちろん、俺に気付いていない。
俺は非常階段を登り、屋上に出た。
「お、今日も来たか。美少年」
扉を開けたら、そんな声が聞こえてきた。
どうやら先客がいたらしい。
「千秋さんだって、今日もいるじゃん」
千秋さんは屋上で会った女性。
千秋さんと出会って、もう七ヶ月が経とうとしている。
俺が屋上に来るようになるよりも先に、千秋さんは屋上に来ていた。
俺は、千秋さんのことはなにも知らない。
何階に住んでいるのか、何歳なのか、とか。
知ってるのは、名前だけ。
「今日はどうしたよ」
「家に帰れなくなった」
扉を閉め、千秋さんの隣に座った。
「帰りたくないの間違いだろ」
そうとも言える。



