今までの経験から、それだけは学習していた。
「遥真は好きな食べ物とかある?」
「は?」
「ほら、いつも弁当がパンだと、栄養バランスが偏るでしょ? だから、お弁当を……」
「余計なお世話」
「そっか……ごめんね」
橋本は寂しそうに視線を落とした。
それを見ても、やっぱり作ってくれとは言う気にはならなかった。
「あたし、こっちだから。また明日ね、遥真」
沈黙が耐えきれなくなったのか、逃げるように角を曲がった。
やっと一人になり、イヤフォンを両耳につけた。
ミュージックプレーヤーに取り込んである音楽を適当に選び、再生する。
電源を切ったときに大音量だったらしく、頭を殴られたような衝撃があった。
慌てて音量を下げる。
音楽を聴きながら、見慣れた道を歩く。
すると、もうすぐマンションに着くってのに、前の方に大嫌いな母親の背中が見えた。
隣にはまた違う男がいる。



