秘密の交換をしよう



放課後、橋本が教室に来た。


今度は、一人だ。



「昼間はごめんね。あんな大人数で」



昇降口を出てすぐ、橋本は謝った。



そう思ってたなら、一人で来ればよかったのに。


あと、場所か。


あんな廊下で言うなっての。



「別に」



心の中でこれでもかってほど文句を言ったが、口から出た声は冷たく、突き放すような言い方になった。



そしてスクールバッグを肩にかけ、両手はズボンのポケットの中に突っ込んだ。



「ね、遥真って呼んでもいい? あたしのことは希美でいいからさ」



靴を履き、校門を潜ろうってタイミングで言われた。



女子はどうしてこう、下の名前を呼びたがるのだろう。


別に、苗字でもいいと思うのに。



「わかった」



だけど、わざわざ嫌だと言って、雰囲気が悪くなるのは面倒。


女子の言うことに逆らうことは、しないほうがいい。