「姫鈴と遥真先輩は、大学の先輩後輩ですわ。そのときから姫鈴たちは婚約してるんですの」



姫鈴さんはさらに結木さんに抱きつく。



そのとき、初めて結木さんの嫌そうな顔を見た。



けれど、誰もそれに気付かない。


それだけみんな、姫鈴さんに視線が集中している。



「姫鈴ちゃん、また後で連絡するから。とにかく、今から仕事なんだ」



遠回しに姫鈴さんを離そうとしているのがわかる。


でも、姫鈴さんが離れる気配はゼロ。



私としても、このまま仕事が進まないのは困る。


不本意ながら、助けるしか選択肢はなさそう。



「結木さん、この資料の確認お願い出来ますか?」



私は印刷しておいた資料を渡す。



何日も前に出来ていた資料だから、確認はもう済んでいる。


でも、私にはこれ以外に方法が思い浮かばなかった。



「姫鈴ちゃん、お願いだから、ね?」


「わかりましたわ。絶対に、連絡くださいね?」