母親は毎日のように、違う男を家に招き入れていたのだから。
近所との関係も最悪で、俺に対する態度もよくなかった。
男が家にいるときは、俺は押し入れの中。
俺の存在を知られたくなかったらしい。
そこで音を立てることすら、許されなかった。
一回だけ、音を立てたことがあって、その日はご飯が出されなかった。
いつもは少なくてもなにかしら渡されていたのに。
そんな生活は、小学校を卒業するまで続いた。
当然、ご飯なしが嫌だった俺は、黙って母親の言うことに従うしかなかった。
中学生になれば、恋だとかに興味を持ち始めた女子に騒がれた。
周りの男子に比べたら、カッコよかったらしい。
小学生のとき、誰とも話す機会がなく、友達がいなかったから、勝手にクールキャラまで定着した。
だが、相変わらず俺の家のよからぬ噂は流れ続けていた。
そのせいか、誰も俺に告白などしてこなかった。
「結木くん、ちょっといい?」
ある日の昼休み、話しかけてきたのは隣のクラスの女子。
名前なんて、知るはずもない。



