どうして気付けなかったのだろう。
俺のせいで、喧嘩が絶えなかったのだとしたら。
「なんで、俺なんか産んだんだよ……」
「そうね。アンタなんか、産まなきゃよかった」
「そしたら、俺らはさっさと離婚出来たのによ」
そういうことか。
あの紙は、離婚届ってヤツか。
いつもは俺の言葉には耳を傾けないくせに、今日は俺の独り言をしっかりと聞いていたらしい。
出来るなら、この二人を殺してしまいたかった。
でも、十歳のガキにそんな勇気なんてない。
落ちると思っていなかった、涙を流すことしか、出来なかった。
それから一週間もしないうちに両親は離婚し、俺は母親に連れられて家を出た。
とは言うものの、実際は置いていかれないように、背中を追っていただけだった。
新しい家でも、俺と母親が会話をすることはなかった。
転校先では、いい扱いを受けなかった。
イジメとまではいかなかったが、日に日に陰口が増えていった。
だが、それも無理ない。



