「嫌ですわ。遥真先輩は、姫鈴の婚約者ですもの。それに、こうしていないと、悪い虫がつくでしょう?」



婚約者……


いきなり、とんでもない情報が……



みんな、固まって動けなくなっている。



「姫鈴ちゃん、僕は婚約者になった覚えは……」


「なにかおっしゃったかしら?」



……姫鈴さんのわがままなんですね。



この場にいる全員の心の声が、揃った気がした。



でも、本人には言えない。


彼女の機嫌を損ねたくないからだ。



姫鈴さんが言ったことは、すべて社長の耳に入り、採用される。


つまり、彼女がクビにしろ、と言えばクビにされてしまうということだ。



「あの、結木さんと姫鈴さんはどういう関係ですか?」



この部署で一番ってくらい、恋人探しに力を尽くしている寺口さんが聞いた。



姫鈴さんは寺口さんを睨みつける。