そして自分のデスクにつき、パソコンを立ち上げる。


私が仕事に取り掛かっても、先輩たちの質問攻めは止まらなかった。



ふと見たとき、結木さんは嫌そうな顔を一つもしていなかった。



そう言えばあの人、どうしてここの部長に移動してきたのだろう。



もともと、私たちの部署にいたわけじゃないし、ここの会社の社員だったとも思えない。


もしいたら、噂になって女性社員がほっとかなかっただろうし。



そんな人が、どうして……



「遥真先輩!」



すると、入り口のほうから嬉しそうな声が聞こえてきた。


そして、その声の主は結木さんに駆け寄り、抱きついた。



「姫鈴ちゃん?」



突如抱きしめて、みんな文句を言うかと思ったけど、それが誰かわかっているから、なにも言わない。


というか、言えない。



結木さんに抱きついたのは、この会社の社長令嬢、楪姫鈴(ゆずりはひめり)さん。



「姫鈴ちゃん、僕、今から仕事なんだ。離れてもらえるとありがたいんだけど……」