運ばれてきたブラックコーヒーを喉に通しながら言うハルさんは、どこか不機嫌だ。
「あたしが美少年にああいうふうに言った理由だろ。簡単なことだ。あたしは美少年に嫌われるべきだったからだ」
「……は?」
「引っ越しだったのは本当。で、子供が嫌いっていうのは嘘。あたしには当時、旦那がいたんだけどさ。結婚生活は酷いなんて一言では片付けられないくらいだった」
「それくらい、言ってくれても……」
「高校生に結婚生活を愚痴れるか?」
ハルさんは返す言葉がなくなったのか、黙り込んでしまった。
「それと、ハルさんに嫌われるべきというのに、どういう繋がりが?」
「ある日、あたしが屋上で美少年と会っていることがバレたんだ。相手が高校生だとしても、アイツは許してくれそうになくて、あたしは美少年を悪者にした。そうしないと、殺されそうだった」
想像以上の理由だったため、私は息をのむ。
「美少年を悪者にしたことによって、あたしが殺されることはなくなった。でも、美少年が殺される理由ができた。だから、離れた。嫌われるように仕向けてな」
簡潔ではあったけど、話が終わったみたいで、私たちの周りだけが静寂に支配された。
他の客の声が、余計に騒がしく感じてしまう。



