「さ、早く帰ろう。凛不足で死にそうだ」
今にもスキップをしそうなくらい、楽しそうに会議室を出ようとするハルさん。
私はデスクの上を片付けたのち、ハルさんの背中を追った。
「あ、そうだ」
出入り口で急に立ち止まったハルさんは、振り向いた。
じっと私の目を見つめてきたと思えば、目の前にハルさんの顔があった。
唇になにかが触れる。
「キス、忘れてたよ。あとで何度も出来るけど」
……もう、頭が真っ白になる。
私は、大人しくハルさんの少し後ろを歩いた。
ハルさんの家に着くと、妙な緊張感が走る。
「玄関なんかにいないで、中に入ってきなよ。そんなすぐ、取って食ったりしないから」
私は警戒気味に、リビングに入る。
時計の針は十時をさそうとしている。
「悪いけど、今からなにか作れる? 俺、夕飯がまだなんだ。凛は?」
ハルさんはスーツをソファの背もたれにかけ、ネクタイを外しながら私に言った。



