「なんて目をしやがる。さすが、不良の娘だ」
山崎は笑い声を殺しながら言った。
「お父さんは関係ないでしょ。それより、こんなことして、なにが面白いの?」
「ゲームだよ。この退屈な学校生活に突如出来た、ゲーム。誰もルールを知らないし、いつ終わるかもわからない」
私をいじめることが……ゲーム?
「ふざけないでよ」
「ふざけてないさ。俺は至って真面目だ。お前をいじめることで、周りがどう反応するか。ゲームであり、実験」
「どうしていじめが実験なんかになるのよ」
「漫画でよくあるだろ。いじめられたほうは泣いて弱って、自殺か転校。教師は見て見ぬふり。だが、実際のとこはどうかわからない」
悔しくも、言い返せなかった。
「だからって、私じゃなくても……」
「一ノ瀬が一番いい反応をすると思ったから、選んだ。パッと見、か弱そうだったし、どうなるか予測不可能で──」
「主導者の自分は楽しめるだろうって?」
山崎の言葉を遮るように聞こえてきた香織ちゃんの声で、涙腺が狂った。
私はその場に座り込んだ。
溢れる涙は止められなくて、いつの間にか近くにいた香織ちゃんに抱きしめられた。
その温もりが嬉しくて、私は香織ちゃんの身体に巻いた腕にそっと力を込めた。



