食卓に、聡さんと葵さんの分だけでなく、私のコーヒーも用意された。
「私、家出じゃないんです。両親とも喧嘩してません」
「え?」
「両親は、もう他界したんです。それで、高校生になってから一人暮らしをするようになったんですけど、この前入院して、そこを出なければいけなくなって……」
「それで野宿を?」
聡さんの質問に、私は頷いた。
「今まで貯めたバイト代で入院費を返し終えたところなんです。なるべく、ここも早く出ていくつもりです」
「そう言っても……未成年だと契約出来ないだろ?」
「野宿でもなんでもします。これ以上、迷惑をかけるわけには」
「なに言ってるの。ずっとここにいたらいいわ。香織には知られたくないのよね?」
「はい」
こればかりは、譲れなかった。
私はまっすぐ、葵さんの目を見た。
「だったら、この話はおしまい。香織は凛ちゃんのこと好きみたいだから、ずっといたって、文句は言わないはずよ」
「本当に、いいんですか?」
「ええ。千紗都(ちさと)の部屋は自由に使っていいってことだから。あ、千紗都にはこの話しても、いい? あの子、家出少女をうちに置くなんて言ったら、反対するだろうから」



