課長の瞳で凍死します ~伊勢編~

 




 真湖は雅喜が刺されないよう、雅喜の前に行こうとした。

 だが、雅喜は、そんな真湖をガードするように前に行こうとする。

 牽制し合う二人は、カニ歩きのような妙な歩き方でトイレへと向かった。

 蛇行しながら、ようやく、トイレの前についたとき、真湖は完全に後ろにやられていた。

 せめて雅喜を捕まえていようと、真湖は、背後からその両腕をつかんでいたのだが。

 でも、これ、見ようによっては、私が課長を前に突き出してるように見えるな、と思っていた。

 そっと雅喜がトイレの戸に手をかける頃には、彼にも真湖の緊張が移っていたようだった。

 そういえば、人の気配があるような、と真湖は、その茶色い木の戸を見つめる。

「……開けるぞ」

「はいっ」
と雅喜の腕を握り締めたとき、雅喜がガラリと戸を開けた。