「ひどぉー!こんな可愛い女の子、覚えてるに決まってるじゃん!」


「可愛い女の子って姫野ちゃんみたいなこと言うんだよ」


「音楽絶対殺す」


「ひいっっ!」


楓ちゃんにキッと睨まれながらそう言われ愛葉くんは顔を両手で覆った。



「…あーあ。あの時みたいに生徒手帳が落ちていたら一発なんだけどなー」


「生徒手帳?」


「…楓」


「あ、ううん!なんでもな〜い!」


楓ちゃんはそう言うと、ニコニコしながら「お口にチャック」の動きをした。


黒川くんと楓ちゃんの秘密。


一体どんなことなんだろう。




────シエルからの帰り道。



「姫野さん、今日はこんな形になっちゃったけど、姫野さんの誕生日当日にちゃんと改めて祝わせてもらえないかな?」



黒川くんがそういって顔を赤くした。



「…う、うん。ありがとうっ」



もうてっきり別れるもんだと思っていたから、なんだかこの会話がくすぐったい。


「…姫野さん。嬉しかったよ」


「…え?」


「俺と別れちゃうんじゃないかって思って泣いてる姫野さん見れて」



女の子の泣き顔みて、喜ぶなんて。
黒川くんはちょいちょい意地悪気質みたいなところあるな。


「意地悪…」


まぁ、そこも…大好きなんだけど。



私と黒川くんはギュッと手をつないだ。