黒 桜

女はどこからか静かに短刀を取り出して男一人の胸を強く刺した。




『き、貴様ぁああ！』




男達は女に襲いかかったはずだが、怪我…いや、死んだのは男達の方だった。


女が舞うように刀を振ると男達は一瞬にして倒れていく。


そんな女の顔は笑顔だった。


紛れもない本当の笑顔ではなく闇に包まれた笑顔だ。




『また殺しちゃった…はぁ、なんでこうなるんだろう…』




女の腕からは血が流れ、男達の死体に零れていく。




『ごめんなさい。せめて…これだけでも』




女はその場から立ち去って山の中に入っていった。俺はすぐに男たちに駆け寄った。


でもそいつらの死体は異常だった。



血は着物や地面に付いているのに刀傷が一つもなかったのだ。



俺以外の人が見たらきっと、病死と判断されてしまうのではないかというくらい傷は一つもなかった。