「そっかぁ。桜女って結構不思議な子だよね〜」



「そうかなぁ」



「だって桜女のここに来る前のこと何もしないんだもん。聞かないし」




そりゃあそうだ。
覚えてないんだから。




「覚えてないんだ。気がついた時には桜の木の上にいて自分が誰かもそこがどこだかもわからなかった。そんな中で総司と出会った」



「え?じゃあ、桜女って本名じゃないの?」




私はまた苦笑いしながら山菜を切った。




「でもこの名前は総司がつけてくれたの。私も気に入ってる。自分の名前も忘れちゃうなんてさ、全然私の名前、気に入ってなかったんだよ…きっと」




椿は何かを察したようでそれからは楽しい話題へと移してくれた。

私的にも嬉しかった。



それからは私と麻生さんと椿と仲良くしていた。

毎日他愛のないことをだべって女中の仕事をして楽しかった。