ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「氷の精霊よ、大気の精霊よ、その力を集結させ、目の前の者の体を穿て! 氷の槍(グラースランス)!」
 
頭上に数多の氷の槍が姿を現し、ザハラ目掛けて飛んでいく。

しかしザハラは剣を鞘に戻すと、咆哮で氷の槍と全て溶かしてしまう。

「はあ……はあ……」

「……これが、長年待ち続けていた魔人族だと言うのですか」
 
そう呟くザハラは鋭い目で私を見てくる。

「これが…今の私の精一杯よ」

「でしたら、今度は私から行かせてもらいます」
 
そう言ってザハラは大きくジャンプすると、再び鞘から剣を抜き振り下ろす。

反射(リフレクション)!」
 
とっさに反射を発動し何とか迎え撃つ。

しかしザハラの振り下ろされた一撃は重く、直ぐに反射全域にヒビが渡り、私を守っていた反射は粉々に砕け散ってしまった。

「っ!」
 
私との距離を縮めたザハラは私の体を蹴り飛ばす。

「かはッ!」
 
そしてそのまま後方へと飛ばされ、私の体は壁へと叩きつけられた。

「うぐっ!」
 
体に激痛が走り私はその場に蹲った。

「……もう、終わりですね」
 
ザハラは私の側まで飛んで来ると、私の頭をわし掴みにする。

「どうやらあなたは、私たちが探していた魔人族ではなかったようですね」
 
私は薄っすらと目を開きザハラの顔を見つめた。
 
私の意識は既に飛びかけていた。

体も熱くなってきて、どんどん息が荒くなってくる。

それに私の中にある存在が、表に出ようと中でもがいている。私はその存在を表に出さないように必死に抵抗した。

「ヨルン。その者たちを殺しなさい」
 
その言葉を聞いた瞬間、私の体が大きく脈打つ。

「い、良いのですか?」

「構いません。その方たちは用済みです。この島を知られた以上、生かしておくわけには行きません」

「わ、分かりました……」
 
私は震える体に力を込めてザハラの腕を掴んだ。