ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

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「私たち竜人族は、魔人族の使徒なのです」

「魔人族の使徒?」

「それは初代魔人王と、我らの先祖が仕えていた光の巫女が、互いに手を取り合った時から始まりました。【どんな事が起ころうとも、どんな厄災が降りかかろうとも、私たちは必ずあなた方の助けとなりましょう】。【約束しよう。この身が尽きる瞬間まで、我らはあなた達の力となり、あなた達の助けとなりましょう】と。魔人王と光の巫女は互いに約束を誓いあった」

「魔人王と光の巫女……」
 
どうしてだろう、私はその話を一度どこかで聞いた事があった。

確かそれは――

「良いですかソフィア。あなたにとって魔人王は――」
 
そこで私の頭に激しい頭痛が走った。

思い出そうとした記憶にノイズが掛かり、記憶は闇の中へと消えていく。

「ですが、それはもう何百年も前の話です。今となっては、魔人族は人間族によって滅ぼされてしまったのですから」

「……そう、だよ。魔人族は人間族によって滅ぼされた。だから私は……」
 
魔人族なんかじゃない! そう叫びたいのに、そう言葉にしたいのに、なぜか私は言う事をためらってしまった。

言ってはいけない事だと思ってしまった。

「いいえ、あなたは魔人族です。その髪と瞳が何よりの証拠なのですから」
 
ザハラの言葉に私は目を見張った。

そして言われて初めて気がついたのだ。

お父様やお母様は、あなたの髪と瞳は特別で珍しいのよと言っていた。

だから小さかった私は特に気に留める事がなく、そのまま大きくなった。

でもよく思い出してみれば、私はこれまで一度も自分と同じ髪を持った人を見たことがない。

それは私が……たった一人の魔人族だから。

「私はさっき、一ヶ月前に禍々しい魔力を感じたと言いましたね?」

「……うん」

「私たち竜人族はその力を感じた時、みな喜んだのです」

「よ、喜んだって!」
 
あんな禍々しい魔力を感じて、喜ぶだなんてどうかしている!