隣りに居るテトにそう言いながらソフィアに目を戻す。
 
あの日から魔人の彼女は表に出て来ていない。

ソフィアの雫が不安定なせいなのか、それともあの戦いで魔力を消耗しすぎて、疲れて眠っているのか。

どちらにしろ、今出て来てもらっては困る。
 
今のソフィアに魔人化した彼女の力は体への負担が大きい。何が起こるのか分からないんだ。

「ところで、ムニン。お前が咥えているその手紙はなんだ?」

「お前宛に手紙だ」

「手紙? 誰から?」

ムニンから手紙を受け取った俺は、表裏を確認してみた。

しかし差出人の名前は見当たらず、手紙の封筒には【アレス様へ】と一言書き記されていただけだった。

「ラブレターかなんかじゃない?」

「……そんなわけないだろ」
 
女の子にモテる自覚はあるけど、ラブレターとかは一通も貰った事がない。

告白だってされたことないんだ。
 
だからこの手紙はきっと……。

「ラブレターじゃないみたいだぞ。その手紙に微かだけど魔力の残り香があったし、魔法を使って遠くからお前宛に送られてきたみたいだ」

「遠くから?」
 
ムニンの言葉に首を傾げながら、とりあえず封を開けて中の手紙を取り出した。

そして案の定、その手紙は。

「依頼の手紙だな」
 
可愛い花柄の便箋には依頼内容が書かれている。

もしかして依頼主は女性だろうか?

「突然のお手紙をお許し下さい。実はあなた様に探して欲しい相手が居ます」
 
手紙の内容を読み上げると、ムニンが頭の上に乗ってくる。

「なんだ、人探しかよ。もっと凄い依頼が来たのかと思っていたのにな」
 
そりゃあ、遠くからわざわざ魔法を使って送られてきた手紙だしな。

俺も少し気を張って手紙を読み上げたけど、そこまで気の張る必要のある内容ではなかったな。