ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「唯一、あの子を引き止める事が出来るとするなら……アレス」

「えっ?」

「あなたにしか出来ないことよ」
 
その言葉に俺は目を見開く。
 
俺にしか出来ないことって、どういうことだよ?

「世界の魔法の事件で、魔人化したソフィアの力に飲まれそうになったあの子を、あなたは呼び戻す事が出来た。だから、あなたならきっとソフィアを救う事が出来るのよ」

「……俺が」
 
でも……いったいどうすれば良いって言うんだ? 

今の俺はソフィアに声を届けることすら出来ない。側に居てあげる事も出来ない!
 
そんな状況で、俺の声が届くって言うのか!?

「くっ……」
 
ソフィアの笑顔が脳裏に浮かんで、今直ぐ助けに行けない事に苛立ちを感じていた時だった。

「みなさん、お待たせしました〜」
 
その声に俺たちは一斉に牢屋の外へと視線を送った。

するとそこには、俺たちを牢屋にぶち込んだ張本人、ヨルンがニコニコしながら立っていた。

「準備って、いったい何の準備なのかしら?」

「ザハラ様とソフィア様の戦いです」
 
ヨルンのその言葉に焦った俺は、鉄格子を掴んでヨルンに叫ぶ。

「お願いだ! 今直ぐその戦いをやめてくれ!」
 
俺の言葉に目を瞬かせるヨルンは、軽く息を吐くと言う。

「それは無理です。これはザハラ様のご命令なので」

「今のソフィアは自由に魔法を使えないんだ! 魔法を使ったらソフィアの体は!」

「魔人族の血を引かれるソフィア様なら、なんとかなりますって」

「……なんとか、だと?!」
 
俺は鉄格子を掴む手に力を込めて唇を噛んだ。

後悔したって今更遅い。

ソフィアは……ここに連れてくるべきじゃなかった。

こいつらはいったい、何の為にザハラとソフィアを戦わせようって言うんだ! 

魔人族だからと言う理由で、何でも出来ると思っているのか!

「ささ、それでは参りましょうか」
 
ヨルンのその一言によって、俺たちが居る牢屋の中に白い煙が注がれる。

「こ、これは!」」
 
真夜中の森で吸った霧と同じもの?!

「あなた方には少しばかり、夢の中に行ってもらいます」

「い、いったい……何の為に……!」
 
何とか必死に意識を保ったが、霧の毒が一気に全身に回った事により、牢屋の中に居た俺たちは全員意識を手放した。

「これでソフィア様の戦う理由が出来ましたよ。ザハラ様」

そう言ってヨルンはニヤリと笑みを浮かべた。