ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「残念だけど、今回は私でもお手上げよ。もし魔剣サファイアを取り上げられていなければ、ここから出るチャンスはあったかもしれないけど」
 
テトはそう言うと、カレンへと視線を送った。

「ねえ、カレン。私ずっと気になっていた事があるのよ」
 
その声に伏せていた顔を上げたカレンは、前髪の中から目を細めてテトを見上げる。

その瞳を見た俺の肩が少し上がったが、テトはそんな事は気にせず直球に問い詰めに入る。

「もしかして魔剣サファイアは、元の魔力を取り戻していないんじゃないのかしら?」

「っ!」

「えっ……?」

元の魔力を取り戻していない? どうことだ?

「どうしてそう思うの?」

「一つはあの時の戦いかしらね。世界の魔法を巡る戦いで、あなたは魔人化したソフィアと激しい戦いを繰り広げた。普通なら魔剣一本あれば、魔人化したソフィアとは互角に戦える。最悪殺すことだって出来る。でもあなたは、ソフィアに負けた」

「……っ」

「それはどうしてかしらね? それにあの時の戦いで、サファイアにはヒビが入ってしまった。エアの恩恵を受けたと言われる魔剣が、どうして簡単にヒビなんて入るのかしら?」
 
テトに次々と図星を刺されていく中、カレンの体は震えていった。まるで何かに怯えているような……。

「おい、テト! それ以上は――」

「あなたは黙ってなさい」
 
テトからあまり聞いた事のない、低い声でそう言われてしまった俺は、何も言えなくなってしまう。

「さあ、応えてもらおうかしら。あなたは本当に【氷の女神の加護を受けし少女】、なのかしら?」

「……ええ、そう。私は……サファイアの主じゃない」

「なっ!」
 
そんな……嘘だろ?! 

でもカレンはちゃんと、サファイアの力を使いこなしていたじゃないか! 

それなのに……。