ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

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「くそっ!」
 
俺は目の前にある鉄格子に思いきり拳を打ち付けた。

「落ち着きなさい、アレス!」

「これが……落ち着いていられるか!」
 
俺たちはヨルンたちによって、闘技場らしき地下の牢屋へとぶちこまれた。

ヨルンの攻撃を受けてロキは気を失ったままで、魔剣サファイアまでも取り上げられてしまった。

これじゃあ、ソフィアを助けに行く事が出来ない!

「竜人族たちの知識の発展は、とても素晴らしいものね。この牢屋の中でも、魔法が使えないように高度な術式が施されているわ」

「その前にこの手枷がされている状態じゃ、魔法を使うどころでもないだろ?」
 
ムニンやテトの両手両足には俺と同じ手枷を付けられている。

これじゃあまるで囚人と同じ扱いじゃないか!
 
この手枷は囚人たちが付ける物によく似ている。

しかしこの手枷の真ん中には、ある結晶らしき物が埋め込まれている。

きっとこの結晶が、俺たちに魔法を使わせないように働くのだろう。

しかし……この世に魔法を使わせないとする結晶が存在するなんて……。
 
牢屋の中ではテトとムニンはあちこちに目を向けている。

ロキは気絶しているせいで床で転がっている。カレンはサファイアを取り上げられて以降、牢屋の隅で小さく蹲って膝に顔を埋めている。

「早くここから出る方法を探さないと」

「それは無理ね」

「なっ! 何を言うんだテト!」
 
テトは俺の肩の上に乗って来ると、尻尾をベシベシと頬に打ち付けてくる。

「魔法が使えない以上、この牢屋から出るのは不可能に近いのよ。でも魔法が使えても、この牢屋に施されている術式を解かない限り、魔法も使えないんだけど」

「じゃあ! ここで待っていろって言うのか!」

「そうね」
 
テトのその言葉に俺は目を丸くした。