「今直ぐサファイアをカレンに返せ! お前たちなんか、カレンにとってはその辺の石ころと変わりないんだからよぉ!!」

「…………ロキ」

「サファイアの力が働かないだって? そんなことない! 絶対にないんだ! 俺はずっとお前を見てきたから分かる! カレンとサファイアは―ー」

「あ〜もう、君うるさい人ですね」
 
そう言いながらヨルンはロキの側に寄ると、鋭い拳をロキのお腹へと打ち込んだ。

「がはっ!」

「ロキ!」
 
そのままロキは気を失うと床へと倒れ込んだ。

「さてさてさ〜て、この者たちは牢屋に入れておいて下さい」
 
その命令に頷いた竜人族たちはアレスたちを連行して行き、ヨルンは床に倒れているロキの手にはめられた手袋を回収した。

「では、後は任せます。ザハラ様」

「ええ」
 
竜人族たちに連行されて行くなか、アレスはザハラの背中に向かって叫ぶ。

「やめろ、ザハラ! 今のソフィアと戦わないでくれ! 今のソフィアは!」
 
アレスの言葉に振り返ったザハラは、アレスに手をかざすと手首にある結晶が埋め込まれた手錠を掛けた。

アレス以外にカレンとロキにも。

「なっ!」

「これで、あなた達は魔法を使うことが出来ません」
 
私の側に居たテトとムニンも一緒に縛り上げられる。

「テト! ムニン!」

「くっそ! 何だこれ! 狼人族の姿に戻れねぇ!」

「ソフィア!」

「っ!」
 
このままじゃみんなが連れて行かれる! 今……今立たなくちゃみんなが!

「離せ! ソフィア!!」

「アレス!」
 
アレスに手を伸ばそうとした時、ザハラがそれを遮る。そして冷たい目を私へと向けてくる。

「あなたはこちらです」
 
ザハラに手首を掴まれたまま、私はある場所へと連れて行かれる。

「は、放して! アレスたちをどうするつもりなの?!」

「……」
 
ザハラは何も言わずに歩き続ける。