テトの見た目はその辺に居る猫と何ら変わらない姿をしている。

しかしテトの人間になった時の姿は、ソフィアの母親であるアフィアさんにそっくりだった。
 
本人は無関係だって言っているけど、とてもそうは思えなかった。

本人に直接問いただそうにも、直ぐにはぐらかされてしまう。

なので、しばらくこの件は保留にしようと思っているところだ。

「別に何でもない。そんなことよりどこに行っていたんだ? お前にはソフィアの監視を頼んだはずだけど?」

「あら、私だってお腹は空くしトイレにだって行くのよ? そんな四六時中この子の側になんて居られないわよ」

「そうかよ……」
 
目を細めてそう呟いた時。

「お〜い、アレス。やっと見つけた」

「ムニン?」
 
すると今度は、手紙を咥えた俺の使い魔であるムニンが、空いている方の肩に上がってきた。
 
ムニンはあの事件をきっかけに、俺と正式に使い魔としての契約を結んでくれた。

出身は狼人族(ヴォルフ)で普段は小さな狼の姿をしているが、ムニンはテトと同じく人間に近い姿になることもある。

また、大きな狼の姿になる事だって出来るんだ。

「そう言えば、ちゃんとソフィアの体に薬は効いているのかしら?」

「まあな。テトの作ってくれた薬のおかげで、熱の方は大分引いてきている。でも雫の方は回復が見られない」
 
悪くもなっていないし、良くもなっていない。だから不安定だ。

「ソフィアに魔法を使うなって言っても、この子が聞くはずないのにね」

「そんなの分かってるさ。だからこうして見張っているんだろ?」

「でもあなたはサルワの件で、片付けなくちゃいけない仕事が山積みじゃない」

その言葉に、さっきまで机の上に積み上がっていた報告書の山を思い出した俺は、記憶を払いのけるために頭を左右に振った。

「それは後でやるから安心してくれ」