ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「ソフィアがそう言うなら……良いけど」
 
テトは目を細めると、ザハラの背中を睨みつける。

そんなテトを見ていたアレスは、私の側に来るとそっと手を握ってきた。

「アレス?」

「大丈夫だ、ソフィア。お前には俺たちが居るんだ。いざとなったら、お前は俺たちが守るから」

「……うん」
 
私は小さく頷き、アレスの握る手を握り返す。
 
竜の血を引くと言われる竜人族――
 
その力は私たちが予想するものよりも凄いものなのだろう。

もし、そんな人たちとアレスたちが戦う事になったら……。

私はそれで良いの? また、守られてしまうんだよ?

「ここが竜人族の村です」
 
ザハラに案内された私たちは、村の入口に立った。
 
村にはたくさんの竜人族たちがいてとても賑わっていた。

村の真ん中には噴水があり、その側では子供の竜人族が遊んでいたり、村の中にはお店もある。

その光景を目にした私たちは目を瞬かせた。
 
確か竜人族は、魔人族と人間族の戦争の後に姿を消したと、魔法書に書いてあったはずだ。

安否不明の種族だったため、滅んだ種族とも言われていたけど、まさかこの島に移り住んでいただなんて。

「私たちはもうずっとここで、何百年と暮らしてきています。エアに与えられた領土を捨て、自らの意思と力で生きるために」

「竜もここに居るんだろ?」
 
アレスの言葉にザハラは暗い表情を浮かべ、視線を下げる。

「ええ、居ました。一ヶ月前までは」

「一ヶ月前……?」
 
一ヶ月前と言うと、ちょうど世界の魔法の事件が起きた月だ。

この島に居た竜も一ヶ月前に行方不明になっている。

これって何かの偶然? それとも……。

「それでは私の家に参りましょう。そこで私の付き人が、お茶を用意して待っていますので」
 
ザハラはそう言うと村の中へと足を踏み入れる。

するとザハラの姿を見た村の人たちは、彼女の側へと集まりだした。