「はあ〜……まったく」
　
まだ怒っているのか、カレンは顳かみをピクつかせながら洗面所へと入って行く。
　
前から気になっていたんだけど、何でカレンとロキってあんなに仲が悪いんだろう？　

「今、何であの二人は仲が悪いんだろうって、そう思っているのかしら？」
　
テトは私の右肩に乗ってくるとそう聞いてくる。

「うん、ちょっと気になるかな」

「あなたがそう気にする事じゃないと思うわ。だって、炎と氷は交わらないものよ」

「それは称号の事でしょ？　別に氷結の魔道士と業火の魔道士だからと言って、二人の仲が悪いのは関係ないでしょ」
　
カレンとロキの与えられている称号は、魔法協会のトップの人たちが、二人を優秀な魔道士として認めている証のものだ。
　
カレンな名の通り、氷結魔法を得意としているし、ロキは炎魔法を得意としている。

ほとんどの人なら、ある特定の魔法を極めようとは思わず、それぞれの属性の中で自分が得意とする魔法だけを、集中的に出来るようにと頑張ろうとする。
　
でも二人は他の人たちとは違って、特定の魔法を最年少にしてほとんど極めた状態だ。きっとその努力は私が想像する物よりはるか上をいくものだろう。
　
それにカレンは魔剣サファイアに選ばれた子だ。氷結魔法を極める以上に、サファイアを使いこなせるように、血の滲むような努力をしたに違いない。
　
だから二人の存在は、私にとって密かに憧れの存在でもある。

「アレスだったら何か知っているかもしれないわね。今度それとなく聞いてみたらどうかしら？」

「いや……あいつに聞いても、簡単には話してくれないと思うけど」
　
テトとそんな事を話していた時、部屋の扉が軽くノックされた。

「ソフィア。俺だけど入っても良いか？」
　
ノックをしてきた人物はどうやらアレスのようで、私は確認を取るようにテトへと視線を向ける。

テトが軽く頷くのを確認した私は、扉まで歩いて行ってそのまま扉を自分の方へと軽く引いた。