「ほら、ソフィア。体の検査をしたいから、服を脱いでくれる?」

「うん、分かった」
 
カレンに言われるがまま、私は着ていた服を脱ぎ始める。
 
夜遅くにクロッカスに到着して、アレスが見つけてくれた宿に泊まった私たちは、そのまま直ぐに朝を迎えた。
 
当然、部屋は男女別々で取って、【俺はソフィアちゃんと同じ部屋が良いんだ〜】と、駄々をこねるロキの体を拘束したアレスは、【それじゃあ、おやすみ】と言って、ロキの体をズルズルと引きずりながら、隣の部屋の中へと消えて行った。
 
ロキのことだから、私たちの部屋に聞こえるくらの声で駄々をこねるだろうと思っていた。

でもアレスのおかげ? なのか、ロキの声どころか隣の部屋からは物音一つ聞こえなかった。
 
そのおかげでぐっすり眠る事は出来たんだけど、朝起きても物音一つしないから、今はちょっと不安に思っているところだ。

「体の方に異常はないわね。雫も今のところ安定しているみたいだし」

「良かった……」
 
カレンの言葉に、胸元に手を当てそっと息を吐いた。

どうやら今日も雫は元の調子を保ってくれているようで、私自身も体の違和感は特に感じられなかった。

このままアレスの仕事が終わるまで、保ってくれれば良いんだけど。
 
そう願いながらさっき脱いだ服に手を通した時、じっと私の様子を伺っていたカレンが口を開く。

「でも、ソフィア。雫の調子が良いからと言っても、魔法を使う事は勧めないからね」
 
その言葉に肩がビクッと上がり、私は直ぐにカレンに言い返す。

「だ、大丈夫だって! みんなに迷惑かけたくないし、魔法は使わないようにする」

「……なら、良いですけど」
 
カレンが心配そうに私を見てきた時、ベッドの上で丸くなって眠っていたテトは起きたのか、大きく伸びをして体を伸ばすと、黒い尻尾を左右に振りながら言う。