「私はあの力と向き合うと決めました。そして自分が魔人族だってことにも。正直言うと、あの力を使うのは怖いし、恐ろしいとも思っています。でも、このままじゃ駄目だとも思っているんです。だから私は共振の力を使いこなしたい。もう守られるだけなんて嫌です」
そのソフィアの覚悟にブラッドさんは小さく頷いてみせる。
「じゃあ、ソフィアの共振の力はエクレールが見てやってくれ」
『良いのですよ。わたくしの出来る事の全てで、ソフィアちゃんとサポートするのです』
頭の中でエクレールさんの嬉しそうな声が響いた。
ソフィアをサポートするって本人は言っているけど、本当はソフィアの側に居られる事に喜んでいるように思える。
でもそれは敢えてスルーする事にした。
「それじゃあ明日からの方針が決まったことで、今日はこれで帰るか」
ブラッドさんはそう言うと羽織っているマントを翻して、真夜中の森へ向かって歩き出す。
「ほんと、あの人って不思議な人ね」
「テト?」
テトはソフィアの肩の上で毛繕いしながら、じっとブラッドさんの後ろ姿を見つめる。
「不思議すぎてあの人を疑うことすら忘れそうになる」
テトの言葉に首を傾げるムニンを見た俺は、先を歩くブラッドさんへ目を戻した。
「アレス、用心しなさいね。簡単にあの人は信じない方が良いと思うのよ」
「それは、どういう意味なの?」
ソフィアの問いかけにテトは【言葉通りよ】と言って、肩から下りると先を歩いて行った。
俺は【テトの言う通りなのかもしれない】と思いながら、ソフィアに目を配って一緒に歩き出した。
俺たちはまだ、ブラッドさんについてよく知らない。
アルさんが言っていた【この世界のトトにならざるを得なかった】と言う話も、よく聞かされたわけでもない。
ブラッドさんがレーツェルさんの力を使えるのは、彼がこの世界のトトだからなのだろうか?
魔剣と守護者たちが全員揃った時、エアと守護者たちが交わした約束という物が、本当に果たされるのだろうか?
そしてあの世界で眠っていると言う闇の存在とそれを封じ込めているトトの存在。
気になることは山ほどある。
でも今は――明日に向かって進むだけだ。
森に入る前に俺は、最後に岬の方へと目を戻した。
シンと静まり返っている岬の先には、ぽつんと一つのお墓があり、辺りには波の心地いい音が響き渡っている。
その光景を目に焼き付けた時、ふわりと風が舞い上がる。
と、同時に一瞬だけお墓の直ぐ側で、白銀の髪をなびかせた女性が、祈るように手を合わせている姿が一瞬見えた気がしながらも、俺は特に気に留める事もなく、踵を返して森の中へと足を再び踏み入れた。
そのソフィアの覚悟にブラッドさんは小さく頷いてみせる。
「じゃあ、ソフィアの共振の力はエクレールが見てやってくれ」
『良いのですよ。わたくしの出来る事の全てで、ソフィアちゃんとサポートするのです』
頭の中でエクレールさんの嬉しそうな声が響いた。
ソフィアをサポートするって本人は言っているけど、本当はソフィアの側に居られる事に喜んでいるように思える。
でもそれは敢えてスルーする事にした。
「それじゃあ明日からの方針が決まったことで、今日はこれで帰るか」
ブラッドさんはそう言うと羽織っているマントを翻して、真夜中の森へ向かって歩き出す。
「ほんと、あの人って不思議な人ね」
「テト?」
テトはソフィアの肩の上で毛繕いしながら、じっとブラッドさんの後ろ姿を見つめる。
「不思議すぎてあの人を疑うことすら忘れそうになる」
テトの言葉に首を傾げるムニンを見た俺は、先を歩くブラッドさんへ目を戻した。
「アレス、用心しなさいね。簡単にあの人は信じない方が良いと思うのよ」
「それは、どういう意味なの?」
ソフィアの問いかけにテトは【言葉通りよ】と言って、肩から下りると先を歩いて行った。
俺は【テトの言う通りなのかもしれない】と思いながら、ソフィアに目を配って一緒に歩き出した。
俺たちはまだ、ブラッドさんについてよく知らない。
アルさんが言っていた【この世界のトトにならざるを得なかった】と言う話も、よく聞かされたわけでもない。
ブラッドさんがレーツェルさんの力を使えるのは、彼がこの世界のトトだからなのだろうか?
魔剣と守護者たちが全員揃った時、エアと守護者たちが交わした約束という物が、本当に果たされるのだろうか?
そしてあの世界で眠っていると言う闇の存在とそれを封じ込めているトトの存在。
気になることは山ほどある。
でも今は――明日に向かって進むだけだ。
森に入る前に俺は、最後に岬の方へと目を戻した。
シンと静まり返っている岬の先には、ぽつんと一つのお墓があり、辺りには波の心地いい音が響き渡っている。
その光景を目に焼き付けた時、ふわりと風が舞い上がる。
と、同時に一瞬だけお墓の直ぐ側で、白銀の髪をなびかせた女性が、祈るように手を合わせている姿が一瞬見えた気がしながらも、俺は特に気に留める事もなく、踵を返して森の中へと足を再び踏み入れた。