ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「いや〜……はは。それがさ、次の時空の割れ目を塞ぐために、あの島を出たまでは良かったんだけど、金がなかった事を今思い出してさ」

「お、お金ですか?」
 
するとブラッドさんはガシッと力強く俺の肩に手を置いた。

あまりの強さに肩が少し上がったが、ブラッドさんはそんな俺に構うことなく言葉を続けた。

「それでさ、アレス。要は相談なんだけどさ、しばらくの間お前の家に上がり込んでもいいか?」

「え…………えええ?!」
 
そんないきなり?! と思いながら俺は声を上げた。

そしてそんな俺とブラッドさんのやり取りを、三人は目を点にして見てきていた。
 
いや、そこは見ていないで何とか言ってくれ! と、内心叫びながら俺は苦笑する。

そして次に声を上げたのはカレンだった。

「先生! でしたら、私の家に来てください! 先生だったら大歓迎です!」

「ちょ、カレン?!」
 
ロキが止める暇もなく、カレンはヅカヅカと俺に歩みよると、メラメラと瞳を燃やしながら言う。

さすがのブラッドさんでも、カレンの目を見て頬に汗を流している。

「いや〜……それはちょっと。ほら、師と弟子と言ってもお前は女だし、さすがに同じ屋根の下って言うのは」

「だから私は大丈夫だって言っています。それに先生には、今まで修行を見てもらえていなかったので、強くなった私をもっと見てほしいんです!」
 
その言葉にハッとした俺は、カレンに横取りされる前に肩に置かれているブラッドさんの手を取った。

「だったら俺も同じだ。俺はブラッドさんに魔剣についての修行をつけてもらいたいんだ。ブラッドさんは俺の家に来てもらうから、カレンは潔く身を引いてくれ」

「な、なんですって……!」
 
俺の言葉に少なからずカチンと来たのか、カレンは少し苛立ちながら目を細めた。

いくらブラッドさんがカレンの先生であったとしても、一人占めされるのだけは避けたかった。
 
それにカレンはこの調子だと、絶対にブラッドさんを貸してくれなさそうだし、ここは強くなる為にも一歩も引くわけにはいかなかった。
 
俺とカレンの間で激しい火花が散る中、俺たちの後ろではソフィアとロキが呆れながら俺たちの様子を伺っている。