「ソフィア……」
 
ソフィアはザハラを見つめながら優しく微笑むと、そっと右手を差し出した。

その姿にザハラは軽く目を見張ると、直ぐに優しい笑みを浮かべるとその手を取った。

「ザハラ。私はずっと自分が魔人族だという事を知るのが怖かった。知る事でこの力に自分自身が取り込まれそうで、それが堪らなく怖かった。でも……今は怖くない。むしろここへ来て、この力と向き合おうと思えるようになった」
 
俺は強い覚悟の意思を瞳に宿しているソフィアの横顔を見つめた。
 
この島に来てからソフィアは大きく成長したと思った。

ソフィアが大怪我を負い、数日間も眠り続けていたあの時、俺はソフィアをこの島に連れてくるんじゃなかったと心底後悔した。
 
でも今は連れてきて良かったと思えている。

この島に来ていなかったら、きっとソフィアは自分と魔人の彼女と向き合おうと思えていなかったかもしれない。

ブラッドさんたちに出会えていなかったら、ソフィアは今もあの魔法陣によって苦しんでいたのかもしれない。
 
それに俺自身もこの島に来なかったら、エクレールさんやブラッドさんたちに出会えなかった。きっとこの出会いには何か意味があると俺は思っている。
 
ブラッドさんが言っていた、守護者としての使命を全うし、この先俺は少しでもブラッドさんの力になれたらと思っている。そしてこの力で必ずソフィアを守って見せる。
 
そう再び覚悟を持った俺はエクレールの柄に手を置く。

「ソフィア、アレス。あなた方の歩む未来が幸せの物である事を願っています。もし、何か困ったことがあったら、いつでも私たち竜人族を頼ってください。力をお貸しします」

「ありがとう、ザハラ。お前たちも困った事があったら、いつでも俺たちを頼ってくれ」
 
俺の言葉にザハラはふっと笑うと、俺の腰から下げられているエクレールさんへと視線を動かした。