「本当にみなさん、ありがとうございました」
 
竜の島――ラスールを出立する日、俺とソフィアたちはザハラに案内されて、一番最初にここへ下り立った時の岬へとやって来ていた。

そしてザハラは、俺たちに深々と頭を下げながらお礼の言葉を述べた。
 
ブラッドさんから話を聞いてから数日が経ち、傷の具合も良くなってきたって事で、俺たちはラスールを出る事に決めた。

ソフィアの体から熱も無事に引いたし、レーツェルさんも【これからは、いつも通り魔法を使っても大丈夫ですよ】と言ってくれた。
 
その言葉にソフィアは凄く喜んでいたし、俺も内心ホッとしていた。

「だからってまだ病み上がりなんだから、私としてはしばらく魔法は控えてもらいたいところだけど」
 
と、レーツェルさんに言われた言葉にはしゃぐソフィアの側で、テトは黄金の瞳を光らせると、彼女の右肩の上でそんな事を言っていたのを思い出す。

「お礼の言うのはこちらの方だ。結局怪我がほぼ治るまで家に置いてもらってたんだし、それに身の回りの事までしてもらっちゃって」

「それは当然のことです。あなた方にはたくさん迷惑を掛けてしまったのですから。それにヨルンの事も……」
 
ザハラはその名を呟くと瞳を揺らしながら空を仰いだ。彼女に釣られて、俺とソフィアも空を仰いだ。

「エーデルにも誓いましたが、私は竜人族の巫女としてこれからも民たちを導いて行こうと思っています。ヨルンが理想としていた巫女と言う存在が、一体どういうものだったのかは分かりません。しかし私は少しでも、ヨルンが理想としていた巫女に近づけるような存在になりたいと思っています」

「ザハラならなれるよ。きっと立派な巫女に」