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ずっと気づいて欲しかった。ずっと隣に居たことに気づいて欲しかった。

私のために頑張っているあなたが、これ以上傷ついていくのを私は見るのが辛かった。
 
何度も何度もあなたの名前を呼んでも、あなたは気づいてくれなかった。

「きっと今度こそ」
 
と。そう思ってもやっぱり、私の声は彼には届かなかった。

「お願い……もう、私のためにそんなことしないで」
 
本当のあなたはそんな事をする人じゃない。

本当のあなたは誰よりも優しくて強く、困っている人のために力を振るえる人。
 
だから私のことなんて忘れて、早く幸せにして欲しかった。
 
でも彼は……それを拒んだ。もう一度私に会うために、彼は自らの人生を掛けて……。

「ブラッド……」
 
愛しい人の名前を呟いて、私は閉じていた目を薄っすらと開く。

私の体は分厚い氷で覆われており、中から壊すのは難しい状態だった。

そもそも体を動かすことが出来ない時点で、それすら不可能に近いのだ。

「ま、た……」
 
これで意識を取り戻すのは何回目だろうか? 

あの戦いからどれだけの時が過ぎたのだろうか? 

いや、そんな事を考える前に私は死んだはずだ。

あの時、星の涙ごと体を貫かれて、私は意識を手放した。

それから……私は。
 
そんなことを考えていた時、再び睡魔が私を襲ってきた。

「ま、待って! まだ……まだ眠るわけにはいかないの!」
 
また眠ってしまったら、今度はいつ目が覚めるのか分からない。

ブラッドに【生きている】って伝えることが遅くなってしまう!

「お願い……待って! まだ、彼に!」
 
しかし私の意識はそこで途切れてしまった。

「……願い……ブラッド」
 
私のために……もう傷つかないで。