ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

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「……っ」
 
ザハラの家から出た俺は、人気のない森の中を歩きながら、ヨロヨロと体を揺らしていた。

しかし体に限界が来た俺は、その場で膝をついて体を伏せる。
 
そして――

「うっぷ」
 
俺は吐いた。

「はあ……はあ……うっ!」
 
しかし吐いても直ぐに気持ち悪さが込み上げてきて、もう一度吐きたい衝動に駆られる。

しかし俺はそれを必死に抑え込もうとする。

「弱音を……吐くな!」
 
そう自分に言い聞かせながら、震える体に力を込めようとする。

「叫ぶな! 泣くな!」
 
そう言いながらも、目に涙が溢れ頬をつたる。

そして激しい憎悪や怒りに自分が囚われていく気がして、俺は首からさげられた翡翠石を掴んだ。

「誰にもこんな姿を見せるな!」
 
ようやくここまで来たんだ。今更この感情に押し潰されそうになってどうする! 

たかがあんな黒猫ごときの言葉で、今まで抑えてきた感情や記憶が一気に押し寄せてきやがった!

「くっそ!」
 
俺の頭の中でずっと前に抑え込んだはずの記憶が流れた。

「ごめ……オフィーリア……ごめん!!」
 
涙を流しながら、俺はオフィーリアの体を強く抱きしめる。

「絶対守るって言ったのに……そう約束したのに!」
 
俺は守護石を掴む手に力を込めて、何とか記憶を封じ込めようと試みる。

しかし記憶は溢れ、俺の頭の中を駆け巡った。

「ブラッド……私も……あなたが好き」
 
その言葉に俺の右目から一滴の涙が頬を流れた。彼女は最後の力を振り絞って、俺に自分の唇を押し当てた。

「ようやく……ようやく、伝えられた……。私は……これでもう……満足です」
 
そう言って彼女は切なく、辛く微笑んでいた。

そして俺はそんなオフィーリアの体が徐々に冷たくなっていっている事に気づき、焦った俺は叫ぶように言う。

「満足だなんて……そんなこと言うな! 俺は! まだお前に見せたい物がたくさんあるんだ! お前と一緒に……いろんなところに行って、たくさん思い出を作って!」
 
抑えていた感情が一気に溢れ、俺はその場でうずくまる。

「くっ……うぅ。オフィーリア!」
 
こんなところで泣いている場合じゃないということは分かっている。

でも今この状態でアルたちのところに戻るわけにはいかない。