ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「あっ！　ソフィアちゃん！」
　
するとロキは私の姿を見つけるなり、人混みを掻き分けでこちらへと走って来た。

その姿を見た私は思わず後退った。

「おはよう、ソフィアちゃん！」

「お、おはよう……ロキ」
　
理由は分からないけど、なぜか私はロキに凄く懐かれている。

初めて会ったのは病室だったし、それまで話したことだってなかった。

でもこうして子犬のように尻尾を振りながら、私の姿を見つけるたび駆け寄って来る。

いったい何でだろう？

「おい、それ以上ソフィアに近づくな！」

「ぐえっ！」
　
ロキを慌てて追いかけて私たちの側に来たアレスは、彼の制服の襟元を掴むと勢い良く後ろへと引っ張た。

「おはよう、アレス」

「ああ、おはよう。体はもう良いのか？」

「まあね。この通り体が凄く軽いの」

「……軽い？」
　
私の言葉にアレスは首を傾げた。

そして私の体を上から下まで見下ろす。

「アレス〜早く行こうぜ！　俺お腹空いた」
　
その言葉にアレスは少し苛立ったのか、軽く目を細めて呆れながら言う。

「眠いって言ったり、ソフィアって言ったり、ほんとにお前は気分屋だな」

「せりに腹は変えられぬ」

「それを言うなら背に腹は変えられないだろ？」
　
ロキの頭をアレスは軽くどつく。

そんな二人のやり取りをミッシェルは、クスクス笑いながら見守っていた。

「それじゃあ行こっか」
　
私とミッシェルが先に歩き出した時、アレスが軽く声をあげた。

「悪い！　忘れ物したから先に行って食べててくれ」

「えっ？！」

「直ぐに戻る！」
　
アレスは私たちの言葉を待たず、人混みの中を通って食堂から出て行ってしまった。

「朝から慌ただしいな。ほらソフィアちゃん、あいつは放っておいて食べに行こうよ」

「う、うん……」
　
ちょっと気になったけど、私はミッシェルたちと一緒にカレンが座っている席へと向かった。