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「はあ〜……久々に飲む酒は上手いな」
 
誰もいない岬の先で、俺はさっきザハラから受け取った酒を飲みながら、一人で座って夜の月明かりに照らされる海を眺めていた。

「ここから見える海も絶景だな。彼女に見せたい場所リストにピックアップしておくか」
 
そう言いながら俺は口に酒を注ぐ。

「……エーデルが言ってたよ。お前に名付け親になって欲しいんだって」
 
俺はそう言いながら、誰もいない場所で誰かに話しかけるように言葉を紡いだ。

「今日初めて出産って物に立ち会ったけど、人間の出産と違って竜の出産はとてもじゃないけど、二度とごめんだと思ったよ」
 
そんな事を笑いながら言い、俺は首から下げられている翡翠石を優しく掴んだ。

「……なあ、オフィーリア。もしお前が生きていたら、俺たちにも子供って存在はあったのかな?」
 
脳裏に彼女と過ごした時の記憶が過り、俺は翡翠石を掴む手に力を込めた。

「最近になってさ、お前と過ごした時のことばかり思い出すんだ。もうずっと前のことだって言うのにな……」
 
そんな事を言っても、返事をくれる存在は居ないと分かっている。

しかし……それでも言葉にするしかなかった。

言葉にしないと……どうにかなりそうだった!
 
俺のために死んだ彼女の事を思い出すたび、彼女を守れなかった自分へ対する怒りを思い出すたび、何度も何度もその場にうずくまって叫びたかった。