ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

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「よし、これで大丈夫だな」
 
レーツェルと右目の魔力を使って、ソフィアの胸元で不気味に輝いていた魔法陣を、跡も残さず完璧に消す事が出来た俺は、そっと息を吐いて鞘にレーツェルをしまう。

「これで後は、共振の魔力に全て任せれば良いだろ?」
 
そう言いながら俺は近くにあった椅子に座った。

「さすがに今日だけで魔力を使いすぎた。こりゃあ暫く体がダルイな……」

数日の間はあまり魔力は使いたくないな……。

『お疲れ様です。ブラッド』
 
すると魔剣だったレーツェルとアルは、元の人間の姿へと戻った。

「ありがとな……レーツェル、それにアルも。でも俺にはまだやるべき事が残っているからな」
 
そう言って椅子から立ち上がり、部屋から見える遺跡へ目を映した後に、俺は部屋から出て行こうとする。

「私もお手伝いしましょうか? 初めての【出産】に立ち会うのは、色々と大変ですよ」

「そ、そうだよな……」
 
そりゃあ……【人間の赤ちゃんを取り上げる】わけじゃないんだもんな……。
 
俺は苦笑し額に汗を浮かべながら、両手を合わせてレーツェルに頼み込む。

「頼む、レーツェル!」
 
そんな俺の姿を見た彼女は、アルと顔を見合わせると優しく笑った。

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「ところでそのブラッドさんは、今どこにいるのかしら? 魔剣のこととか、守護者のこととか、色々と話してくれるんじゃないの?」
 
テトのその言葉を聞きながら、俺はハンカチで涙を拭っていた。

さすがに泣いているところをみんなに見られたのは恥ずかしかった。
 
テトの言葉にアルさんとレーツェルさんは顔を見合わせると、同時に遺跡へと目を移動させた。

そしてレーツェルさんが。

「出産中です」
 
その彼女の言葉にこの場に居た俺たち全員は声を上げたのだった。