ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

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食堂に着くとやっぱり中は大勢の生徒たちで賑わっていた。

「凄い人……」
 
やっぱりみんな学校の食堂を開くのを待っていたのかもしれない。

だってこの学校の食堂で食事を作ってくれる人は、みんなお父様が選んだ有名な料理人たちなのだ。

有名な料理人たちが集まった食堂で美味しいご飯を食べられるのは、エアトート魔法学校に通う生徒だけの特権である。

なんとか生徒たちの微かな間を潜り抜け、広いところに出たところで私は、ある人物の姿を見つけて名前を呼んだ。

「ミッシェル〜!」
 
私の声に気がついて振り返ったミッシェルは、目を丸くすると嬉しそうに微笑んで、こちらに駆け寄って来た。

「ソフィア?! 体の方は大丈夫なの?」

「大丈夫よ。この通り元気だから」
 
そう言ってミッシェルに笑って見せた。

「よ、良かった〜!」
 
ミッシェルは安心したのか、目をウルウルさせながら私に飛びついて来た。

それに驚いて体が後ろに倒れかけるが、頑張って踏ん張りなんとか倒れずにすませる。

「ちょっと……危ないじゃない」

「だってぇ〜ここ最近倒れてばっかりだから、心配だったんだからね!」

「ご、ごめんってば」
 
私は苦笑しながらミッシェルの背中を、あやすように優しく擦った。
 
ミッシェルや他の人たちには、私の体について詳しく話していない。

この学校で知っているとすれば、アレス、テト、ムニン、それにシュー先生だ。

あと知っているとしたら……。

「あら、もう起きて大丈夫なの?」
 
すると私たちの側に見覚えのある子が姿を現し、私とミッシェルはそちらへと視線を動かした。

真っ青な青髪を持ち、腰から魔剣サファイアを下げた氷結の魔道士カレンが、紫色の目を瞬かせながら立っている。
 
彼女の姿に驚いたミッシェルは目を丸くし、そんな彼女の隣で私はカレンに声を掛けた。

「カレン? 久しぶりだね」

「ええ」
 
カレンはあの事件をきっかけに、このエアトート魔法学校に入学したとアレスから聞かされた。

どうやらあの事件がきっかけで、お父様にスカウト? て言うか、入学を勧められたらしい……。
 
もちろん氷結の魔道士と呼ばれる程の実力を持った彼女は、入学試験を全て完璧にこなして、直ぐに紫雫のクラスへと配属された。