ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「誰にだってそんなもの、人に見せたいと思うものではありませんわ」
 
すると部屋の入口で聞き覚えのある声が聞こえた俺たちは、いっせいにそちらへと視線を送った。

視線を向けた先にはレーツェルさんとアルさんが立っていた。
 
レーツェルさんは優しく微笑むと俺の前まで歩いて来る。

そして右腕を少し上げると、左手を使って着ている服の右袖を引いた。

「っ!」
 
そして俺たちは見せられた腕に目を見張った。

彼女の腕には何かで叩かれた後の傷跡がくっきりと残っていて、それは何十箇所にも存在していた。

その傷の具合を見る限り、永遠に消える事がないんだと悟った俺は、見ているのが辛くなってきて、思わず目を逸らそうとしてしまった。
 
そんなレーツェルさんを見たアルさんは、怒った顔を浮かべると直ぐにレーツェルさんの腕を隠した。

「レーツェル! お前何を!」

「良いのです。アムール様」

「……しかし」
 
頭を横に振るレーツェルさんを見たアルさんは、とても複雑な表情を浮かべると、彼女の体をそっと抱きしめた。

「……私は聖国(せいこく)で聖女として、幼い頃から教育されて育ちました」

「えっ……」
 
聖国? ……聖女?

「聖女として神の声を聞き、その声を民たちに伝える事が私の役目でした。しかし……それは私が人形だったから」
 
【人形】と言う言葉に俺たちは首を傾げる。

そんな俺たちの姿を見たレーツェルさんは顔を下に伏せた。

「私は……人形だったんです。聖女と言う名の人形。小さい頃から聖女として教育されてきても、間違った事をすれば体を鞭で何度も何度も叩かれました」

「っ!」
 
じゃあ……その腕の傷は!

「腕以外にも私の体には、この鞭で叩かれた後が残っているんです」

「レーツェル。それ以上は……」
 
アルさんは今にも泣きそうな顔でレーツェルさんの口元を覆った。

そんな彼にレーツェルは小さく頷いて見せる。

「誰だってこんなもの、見られたくないと思うものです。見られてしまったら、きっと同情されてしまって、悲しい目で見られてしまう。きっとソフィアさんはそれが嫌だったんですね」
 
レーツェルさんのその言葉にカレンはゆっくりと頷いた。

そんなカレンを見た俺は拳に力を込める。
 
確かにレーツェルさんにそう言われなかったら、俺はソフィアの事を悲しい目で見たかもしれない。

……いや、その前に怒りのこもった目でソフィアを見ていたかもしれない。

自分自身に腹が立って自分に怒っていたと思う。