ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「カレンからしたら、サファイアはとてもクールな女性で、凛々しい人に見えたでしょう?」

「は、はい」

「でもそんなサファイアにも、可愛いところがあるのですよ」

「そうなんですか?」
 
エクレールさんのその言葉にサファイアの刀身が輝く。

「ああ見えてサファイアは、ある殿方の隣だと物凄く可愛いのですよ?」

「あ、ある殿方?」

「そうなのです。その殿方と言うのが」

『もうわかった! 分かったからそれ以上は言うな!!』
 
するとサファイアの刀身が青白く輝くと、彼女もまた人間の姿へと姿を変えた。

そしてそんな彼女の姿はあの時、闘技場でソフィアの魔人の力を封じ込めたその人だった。
 
その姿に目を見開いた時、サファイアはカレンの横を通ると、エクレールさんのその先の言葉を言わせまいと、慌てて口を右手で塞いだ。

「勝手に人の話をしないでもらえるかな? 【エクレール】」

「……ニッコリ」
 
しかしエクレールさんはそんなサファイアの手を簡単に払い除けた。その光景に驚くも、彼女は再び口を開くと言葉を続けた。

「その殿方と言うのが」

「だから!」

「コス――」

「あ〜!! もう分かったから! それ以上は言わないで下さい、お姉ちゃん!」
 
サファイアは顔を真っ赤にしながら、声を荒げてそう叫んだ。

そんな彼女の姿に俺たちは目を点にして見つめた。
 
しかしエクレールさんだけは、とても嬉しそうにニコニコと微笑みながら、サファイアの体をギュッと抱きしめた。

「もう〜そんな意地を張らなくても良いのですよ? もっと早くにお姉ちゃんと呼んでくれれば、こうしてぎゅっとして頭を撫でたのに」
 
エクレールさんに体を抱きしめられながら、頭を撫でられているサファイアは、とてもうざそうに頬を引きつらせて。

「この……腹黒女」
 
そうボソッと呟いていたのだった。