あの事件が無事終息へと向かい始めても、ソフィアはまだ目を覚まさなかった。

体の傷は完璧とはまではいかないが、目立たない程度には回復してきていた。

ただやっぱり、熱だけは一向に引かないでいる。

「これ以上眠り続けたら、流石に心配になってくるわね」

「……そうだな」
 
でも俺には何も出来ない。何かをしてあげる事すら出来ないんだ。

ただ今は早くソフィアの目が覚める事だけを、祈る事しか出来なかった。

それが悔しくて俺は右拳を作ると力を込めた。

「あらあら、みなさんこんなところに居たのですね?」
 
すると部屋の中にエクレールさんが入ってきた。

彼女の姿はあの光の世界で見たものと一緒で、ニコニコと微笑みながら周りに花を飛ばせている。

ここ数日エクレールさんは人探しをしていて、しばらく帰って来ていなかったけど、今戻って来たってことは、探していた人が見つかったのだろうか?
 
そして案の定、エクレールさんの姿にロキは見惚れている。

やっぱり予想通りの反応で、どうせこの後に口説きに行くんだろうと思っていたら、なぜかロキはエクレールさんには見惚れるだけで、カレンの側から離れようとしない。
 
そんなロキに首を傾げた時、エクレールさんはカレンの側にあったサファイアを見つけた。

「あっ! ようやく見つけたのですよ! サファイア!」

『うっ!』
 
その時、頭の中でサファイアの声らしき呻き声が上がった。

まさかエクレールさんの探していた人ってサファイア!?

しかしサファイアはずっとカレンの側に居た気がするんだけど……。

「もう! ようやく再会出来たのですよ? 照れずにお姉ちゃんの腕の中に飛び込んで来ても良いのですよ?」

「……お姉ちゃん?!」
 
その言葉にこの場に居た俺たちは全員声を上げた。
 
え、エクレールさんがサファイアのお姉さんっていう事は、二人は姉妹なのか?!

『……』
 
エクレールに声を掛けられているサファイアは、何も反応を示すことなくじっとしていた。

その様子に彼女は頬を膨らませると、何を思いついたのかニッコリと微笑むと口を開く。

「それではみなさん。ここでわたくしからお話があります」

「お、お話?」
 
その言葉に俺たちは首を傾げる。

「そうなのです。まだわたくしはみなさんと知り合って日が浅いのですが、ここは親睦を深めるという事で、わたくしとサファイアの秘密を暴露したいと思うのです」

「暴露?!」
 
エクレールさんの秘密は良いとして、サファイアは流石に嫌だろ? 

そう思ってサファイアに目を向けると、彼女はまったく何の反応も示していない。
 
そんなサファイアにカレンも心配になったのか、サファイアへと目を配る。