エクレールさんの浄化の力によって、自我を失くした竜人族たちの体を蝕んでいた黒い粒子たちは無事浄化された。
　
しかし黒い粒子によって自我を失くしていた竜人族たちは、仲間を襲ったことを覚えていなかった。

それはそれで良かったと思うべきなのか、悪いと思うべきなのか……。

あの事件のせいで、死んでしまった竜人族たちは何十人といる。
　
ザハラは救えなかった者たちのために涙を流し、そしてヨルンのためにも涙を流していた。

だから竜人族は誰を攻め立てることもせず、死んでいった者たちに花を手向けていた。
　
そんな彼女たちを、俺たちはじっと見守る事しか出来なかった。

「なあ、カレン。もう立っても平気なのかよ？」

「だから……さっきから大丈夫だって言ってるじゃない！」

あの事件から一週間が経った頃――
　
竜人族の村も帰ってきた竜騎士たちの手伝いによって、元の姿を取り戻しつつあり、俺たちも怪我の治癒に専念するために、今もザハラの家に厄介になっていた。
　
そんな中サファイアに認められたカレンは、彼女の魔力を使った事によって魔力を激しく消耗してしまい、そのせいで三日間も眠り続けていた。
　
しかし二日前に目を覚まして、カレンの体を見ていたレーツェルさんからは【もう大丈夫ですよ】とは言われたものの、カレンが倒れたと知ったロキは四六時中ずっと側に居た。
　
それは今も続いていて、カレンが目を覚ましてからも絶対にその場を離れようとはせず、さすがのカレンでもイライラが募ってきているところだ。

「まったく仲が良いんだか悪いんだか、いったいどっちなのしからね？」
　
すると俺の右肩に乗ってきたテトはそう言いながら軽く息を吐く。そんな彼女に俺は問いかけた。

「テト。ソフィアは目を覚ましたのか？」

「……いええ、まだよ」
　
その言葉に俺は目を細めて顔を伏せた。