ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「だってねぇ……。昨日まともに体を動かす事が出来なかったのに、そんな急に体が軽くなることなんて有り得るのかしら？」
　
テトはベッドから下りると私の肩に登ってきた。

「それにあなたは直ぐに魔法を使うじゃない。体がもとに戻っても、また寝たきりの生活に戻るのがオチよ」

「こ、今度はちゃんと考えて使うよ」
　
これ以上、アレスに迷惑掛けたくないし心配もさせたくない。あと怒られたくない。

だからこの先は、もう少し考えてから魔法を使おうと思う。
　
そう思いながら、ハンガーに掛かっている制服に手を掛け着替え始める。

今日は学校の方で魔道集会が行われる事になっている。今後の日程についてのお知らせや、生徒会から大切な話があるらしい。
　
でもその前に今日から学校の食堂が開く事になっているから、魔道集会が始まる前に腹ごしらえをしようと思う。

「体が軽くなった……ねえ」
　
私の言葉を疑っているのか、さっきからテトがぶつくさと何か一人言を言っている。

そんなテトを横目で軽く睨みつけながら問いかけた。

「まだ疑ってるの？」
　
マントを羽織り鏡に向き合ってネクタイを結ぶ。

「だって不思議じゃないかしら？　いきなり体が軽くなるなんて」

「そうかな？　……あっ、それは置いておいて今日は良い夢を見たのよ」

「良い夢？」
　
鏡でネクタイの位置を確認し、タンスから黒いソックスを取り出す。

「凄く心地よくて温かい夢だった。それを見た後のおかげなのか、体の調子も良いし気分もいいの」

「ふ〜ん……」
　
テトは肩から下りると机の上に登って窓の外を見つめる。
　
何か居たのだろうか？

「ほら、テト行くよ」
　
部屋を出た私は、そのままエアトート魔法学校に向かって家を出た。