ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「ああ、聞こえないと思うぜ。なんせ今目の前には、欲しくて欲しくて堪らない魔力の存在があるんだからな」

「なんだそれは……そんなもの、僕は知らないぞ!」

「そうだろうな。だってお前は、本当の暴食の悪魔について知らないんだから」

「そんなことはない! 僕は誰よりもこの子たちを知っている! だって僕はずっとこの子たちを育てて来たんだから」

「そうだな。己の欲望のために、だけどな」

「っ!」
 
俺の言葉に目を見張るヨルンに俺は目を細めた。

「己の欲望のためにそんなものを引っ張りだして、大勢の無関係の人たちを傷つけた挙げ句、お前の事を心から信じていたザハラの思いを、お前は裏切った」

「っ! ザハラ様……」
 
俺はレーツェルとアムールを構えて、ヨルンへと向かって行く。

「くっ! お前たち行け!」
 
黒い粒子は一箇所に固まると、黒く大きな化物へと姿を変えて、俺を飲み込もうと口を開く。

「タベルタベルタベルタベルタヴェル、タヴェル! タヴェル! タベル、タベル!! 星の涙(ステラ・ラルム)!!」

「……悪いけど、そんな物はもうこの世には存在しない!」
 
レーツェルとアムールの魔力が貯まりきり、俺は高くジャンプして二つの剣を掲げた。

「この世界を幸せにするために、彼女との約束を果たすために、お前みたいな存在は邪魔なんだよ!!!」
 
レーツェルの刀身に金色の炎、そしてアムールの刀身に赤紫の炎が灯ると、それは一つの黄昏色の炎を作った。

黄昏の絆(トワイライト・プロメッサ)!!」
 
黄昏の炎は黒い化物を真っ二つに斬り捨てた。

しかし黒い粒子たちはその魔力を喰らおうとする。しかしそれを俺の魔力は許さず、どんどん黒い粒子たちの体を壊していく。

「な、なんだ、これ……」
 
バラバラになった黒い粒子たちは、地面へと落ちると体をピクつかせた。

「どうだ? この感情の味は?」

「――っ」
 
その言葉に俺はニヤリと笑みを浮かべた。