ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「あ〜、やっぱりな」
 
ブラッドさんは勝手に何かを納得すると、ムニンの体から顔を上げた。

「な、何がやっぱりなんだよ! つうか、勝手に人の服を破いた挙げ句、人の体を凝視するなんてあり得ないぞ!」

「うわっ! その言葉遣いと口調……昔のフォルにそっくりだな」

「親父とそっくりなんて言うな!」
 
二人のやり取りに呆気に取られながらも、ブラッドさんは地面に突き刺した剣を取ると言う。

「どうやらお前には、それ以上侵食が進まないようだな」

「は、はあ?!」
 
いったいどういう意味なんだ? どうしてそれ以上、侵食が進まないなんて言えるんだ?

「それはとても簡単なことです」

「うわっ!」
 
すると突然、俺とロキの後ろに見知らぬ一人の女声が立っていた。

驚いて思わず声を上げてしまったが、よく見るとその女性もまたとても美しい容姿をしていた。
 
肩先まであるストレートの白銀の髪に、テトと同じような瞳をした金色の目に俺たちの姿が映っている。

当然、そんな彼女を見たロキはすかさず彼女との距離を縮めた。

「初めましてお嬢さん。こんなところにいったいどんな用事でしょうか?」
 
いや、どんな用事って……。

森人族のベルには全然反応しなかったくせに、こういう人には反応するのか。

これはエクレールさんの姿を見ても直ぐ口説きに行きそうだな。

「あ、それ以上レーツェルに近づかない方が良いぞ」

「えっ?」
 
その言葉にブラッドさんの手の中にあった剣が宙に浮くと、そのままロキへと勢いよく向かって行き、刀身を平たくして思い切りロキの頭をぶっ叩いた。

「いっっっってぇえぇぇ!」
 
ロキは目尻に涙を浮かべると、頭を抱えたままその場にしゃがみ込んだ。

「な、何しやがる!」

『それはこっちの台詞だ』
 
頭の中で男の声が聞こえたと思ったら、宙に浮かんでいた剣はある人間へ姿を変えた。

俺と同じ紅い髪に、鋭く細められるピンク色の瞳。

額には紅色のバンダナが巻かれており、両耳からは青と紫色のリボンが付いたピアスが揺れる。

「おいおい、アル。そこまで怒ることはないだろ?」

「いや、そういうわけには行かない」
 
アルと呼ばれた青年はブラッドさんを横目で見た後、その場にしゃがみ込んでいるロキに忠告するように言う。