ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

その言葉にブラッドさんは左手を上げると、思い切りムニンの左頬を引っ叩いた。

その光景にこの場に居た俺たち全員が、驚いて目を丸くした。
 
ヨルンも目を丸くしながら目を瞬かせていた。

「別に俺の話しは信じてくれなくても良い。でもな、フォルの思いやスカーレットの思いを否定することだけは許せねぇ!」

「……っ」

「なぜ、フォルが病の話をお前にしなかったと思う? それはスカーレットに頼まれたからだ。スカーレットはお前が病の事を知ったら、更に自分の事を嫌いなってしまうと思っていた。そうなってほしくなかったから、スカーレットは何も言わなかったんだよ! フォルはお前たちを切り捨てたと言っても、お前たちのことは心から愛していた」
 
ブラッドさんはムニンの胸倉を掴むと、ぐっと自分の顔を近づける。

しかしムニンはブラッドさんの顔から目を逸してしまう。

それでもブラッドさんは言葉を続けた。

「あいつの部屋には、今もお腹を大きくしたスカーレットの写真が飾ってある」

「っ!」
 
その言葉を聞いたムニンは、目を見張ってブラッドさんへと目を戻した。

「あいつは言っていた。原因不明の病が流行っていても、自分はそんなことよりも、生まれてくる子を楽しみにしていたと。あいつは後悔していた、スカーレットを守れなかったことも、村を守るために自分の子供と愛しい人を切り捨ててしまったことも」

「……っ」

「だからって、それが全部自分のせいだと思うのは間違いだ。お前は何もしていない。生まれて来なければ良かったなんて思うな。だってお前は、スカーレットとフォルから望まれて生まれてきた子なんだから」
 
ムニンは涙を流すとギュッと目を瞑って頷いた。

その姿を見て微笑んだブラッドさんは、ムニンから手を離すとヨルンへと向き直った。