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「あなたが……光の巫女?」

「はい、そうなのですよ」
 
光の巫女――エクレール・ストレリチア。

光の巫女って確か、初代魔人王と手を取り合って互いを支えに生きた人だよな? 

でもそれは大昔の話のはずだ。

それだと言うのに、どうして光の巫女が俺の目の前に居る? 

それにどうして名前が二つあるんだ?

「あっ! そうでしたね。この世界ではもう【苗字】という物は存在しないのですね」

「みょ、苗字?」
 
苗字ってなんだ?

「今はその事は置いておくのです。今はあなたに、わたくしの主になって頂きたいのです」

「あ、主って事は、魔剣の主って意味ですか?」

「はい、そうなのですよ」
 
そう言ってエクレールさんは、ニコニコと笑みを浮かべた。

そんな彼女の周りに、フワフワとお花が飛んでいるように見えるのは気のせいだろか?

「わたくしには是非とも、あなたに主になって欲しく思っているのですが、お嫌ですか?」

「……いいえ」
 
俺は拳に力を込めてそう言い放った。

「これは俺にとってチャンスなんです。魔剣の力を手に入れる事が出来るチャンスが、今目の前にあるんです」

「あなたはわたくしの力を手に入れたら、どうされるのですか? 世界を破壊しますか? それとも世界を豊かにするのですか?」

「……俺は、そのどちらもするつもりはありません」
 
その言葉にエクレールさんは軽く目を見張った。

しかし俺はそんな彼女を真っ直ぐ見つめながら言葉を続けた。