俺はその背中を見つめ、剣へと視線を落とす。

「お、おい……アレス。その剣ってまさか!」

「……」
 
俺はごくりと息を飲んだ。

もし投げ渡されたこの剣が魔剣だったら、なぜあの人はそれを俺に寄越したんだ? 

あの人はいったい何者なんだ? エアの代行者っていったい?

『あらあら、まあまあ、あなたがわたくしの主なのですね?』

「えっ?」
 
その言葉を聞いて目を瞬かせた時、目の前の景色が一変した。
 
突然、俺の体は金色の世界を漂っていて、側に居たはずのロキも、目の前でヨルンと戦っているブラッドさんの姿もなくなっていた。

「こ、ここは……?」

「ここは光の世界なのですよ」
 
後ろの方で声が聞こえそちらへ振り返ると、そこにはある女性が一人立っていた。
 
肩先まである黄金の髪に、優しく細められる黄金の瞳。

彼女の額には淡い光を放つルビィの宝石が吊るされ、薄いベールを被っていた。

そしてふわりとなびくウェディングドレスに似た薄紫のプリンセスドレス。
 
その姿に俺は思わず見惚れてしまった。それ程までに、今目の前に居る女性が美しく神秘的だったのだ。

「あの、あなたは?」
 
彼女は来ているドレスの裾を軽く持ちあげると言う。

「お初にお前に掛かります。わたくしの名は【エクレール・ストレリチア】。光の巫女と呼ばれておりました」

「え、エクレール・ストレリチア? …………光の巫女?!!」
 
彼女の名前に驚いている俺の姿を見たエクレールは、どこか面白げに優しく微笑んだのだった。