ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「……なんで」
 
僕は森の入口付近で膝をついて蹲った。

「な、んで……! どうして母上を!」
 
許せなかった。母上を奪った親父も狼人族の奴ら全員が許せなかった。

でも一番許せなかったのは僕自身だ。
 
僕が母上を守らないといけなかったのに、たった一人の家族を僕は守る事が出来なかったんだ。

「くっそぉぉぉ!!」
 
僕は何度も何度も拳を振り上げては地面に打ち付けた。

「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!! くっ……うぅぅ」
 
僕は夕焼け空を見上げて思い切り叫んだ。

「くっそぉぉぉぉ!!」
 
そして僕は狼人族には戻らず、テトと出会って使い魔として生活を始めた。

あの記憶を消したかった僕は、記憶に関する情報を集めそして魔法を習得した。
 
使い魔には変わった奴らがたくさんいて、誰も僕を異端児だとは呼ばなかった。

そのおかげで自然と笑うことも増えて、友達もたくさん出来たし、僕の力が誰かの役に立つことが嬉しかった。
 
しかしそれでも心の傷が癒えることはなかった。

四十年経った今でもあの時の事は心に深く刻まれている。
 
きっとこれは永遠に癒えることはないと思う。

この先……何があっても。